新MBA論

MBAについて色々。タカ派な内容に終始。

海外MBAは必要か? その2

MBA不要論について、あまりにも筋の悪い仮説に基づいた記事を発見したので、紹介するとともに反論してみたい。

その記事がこれ。

blogos.com

 

 

では、一言一句反論していきます。嘘です。気になる点だけ。そしてMBAに関するところだけ。

まずタイトル。「MBAで成功した起業家はひとりもいない」。この部分ですでに2つ大きな誤りがある。(1)MBAは起業家養成学校ではない、(2)個人的に成功したと思える起業家は無数に存在する。

 

(1)MBAは起業家養成学校ではない:

起業に特化したスクールもあるけど、誰も「MBA出たら起業家になれる」と卒業生は思っていないし、トップスクールでも卒業後に遅かれ早かれ起業する人は10%もいないのではなかろうか。ビジネススクールで学べる内容は、ホリスティックなManagementに関する様々な内容で、非常にいけてない「経営」という直訳でイメージされるものとは異なる。企業戦略から人事論といったいわゆる経営ど真ん中のクラスもあれば、ポートフォリオ理論や株式投資、プライベートエクイティ投資、不動産投資など、投資のマネジメントに関わる多くのクラスも多い。ファイナンススクールであるウォートンやコロンビア、シカゴではむしろ投資系のクラスの方が多いし、人気だ。以前よりは少なくなったものの、MBAの卒業生の多くがIBやアセマネ、PEなどの金融に行く。さっきも書いたが、起業家を目指す人間は圧倒的マイノリティだ(スタンフォードを除く)

 

(2)MBAで成功した起業家は無数に存在する

成功した、の定義があいまいだが、個人的には成功したと思える起業家は無数に存在すると思っている。

投資ファンド界隈の「起業家」はその多くがMBA卒だ。

ウォーレン・バフェット(コロンビア)

レイ・ダリオ(ハーバード)

ラリー・フィンク(UCLA)

ビル・グロース(UCLA)

等々きりがない。

 

それとも彼の言う「起業家」には「投資ファンド」は含まれないのだろうか?投資ファンドのファウンダーだって立派な起業家であるのだが。投資ファンドはだめだという偏屈な理屈をこねるのであれば、「事業会社」の起業家も挙げてあげよう。

 

フィル・ナイト(ナイキ スタンフォード)

スコット・マクネリ(サンマイクロ スタンフォード)

マイケル・ブルームバーグ(ブルームバーグ ハーバード)

等々。

 

いやほんと彼の言う「成功」の定義を聞いてみたい。これはあれだ、大卒でない起業家を並べて「大学なんて行っても意味ない!」といっているのと同じだ。そういった批判はしないんですね。ビル・ゲイツ、ザッカーバーグ、リチャード・ブランソンは大卒じゃあないんですが。

 

タイトルに時間を使いすぎるのもあれなんで、本文を読み進めてみると、

>(MBAは)なぜ無意味かといえば、世界的に見ても、成功した起業家で、MBAホルダーはほとんどいないからだ。

一人もいないのかほとんどいないのかどっちやねん!ちょっと自信がなくなったのかトーンダウンしている。ただ、やはり「ほとんどいない」というのも大きな誤りなのだが。そして、MBA=起業家養成プログラムではない。MBA出の起業家は少ないからMBAは無意味だ、ってまず仮説の立て方がおかしすぎる。

 

ここまで1000字以上使いましたが、まだまだ行かせてもらいます。次、本文。

まず挙げている起業家の人たち。全部ゴリゴリのテック系企業じゃないですか。そういうバリバリの理系企業を挙げて、文系であるMBAの素養を疑うのはちょっと変じゃないですか?というか、今のマイクロソフト本社の社長はシカゴMBA卒ですけど、起業家じゃないから入りませんか。そうですか・・・。

 

>かつて私は国内のビジネススクールで教鞭をとっていたが、講義の後に、希望する学生と連れ立って飲みに行くと、「MBAなんて、役に立たない」と伝えていた。

この方のMBAでの立場を知りませんが、教える立場の人間が、MBAを取得してきている学生に対して「意味が無い」という時点で、この筆者の人間性を疑います。彼らは彼の講義に金を払い、忙しい時間を割いて勉強しにきているのです。そんな意欲のある人間に対して、「あんたらが追い求めているMBAなぞ意味が無い」とはひどすぎる。このエピソードだけで、彼のエゴイズムがありありとわかる。

 

ちょっとおもしろすぎるので、色々言いましたが、MBA批判ってこういうことなんですよ。意味の分からない滅茶苦茶なロジックでMBA不要論をぶちまけ、悦に浸ってるだけ。こういった筋の悪いMBA批判には耳を貸さず、自分が行きたいと思えば行くべきだし、そうでないなら行くべきでない。