新MBA論

MBAについて色々。タカ派な内容に終始。

MBAの授業の質

MBAの授業の質についてだが、当然ではあるがピンキリだし、人によって感じ方も違う。トップスクールであろうが、質の悪い教授もいれば、感動する程レベルの高い教授もいる。一般化するのであれば、熟年の教授の授業ほど質の高い授業が多く、そして若手の(日本で言う)准教授の受け持つ授業もなかなか面白い。

熟年とは、単に年齢が高いわけではなく、教授歴が長い人の’ことを指す。ビジネススクールの授業に対する要求水準は非常に高く、定期的に行われる学生からの授業評価が悪ければ、「首」になる。そのため、長年トップスクールの教授に留まることは非常に難しく、教授歴が長い人=学生の満足度が継続的に高いことを多くの場合意味する。当然、授業の質が悪かったとしても、研究者としての実績が高ければ生き残ることもできるのだが。そして、若手の准教授はさらに生存競争が厳しく、彼らは実績がないことから、授業の評価が彼らの雇用に大きく影響を与えるため、授業に文字通り全力を注いでいる。事前準備を入念にし、もし学生に不満点があるのであれば、即座に改善しようと努力する。やや、学生に迎合的になっている印象もあるが、彼らの努力には目を見張るものがある。

一方で、客員教授の授業は得てして良くない場合が多かった。彼らは本職の片手間でやっており、教授職は名誉を得るためでしかない様に思える。客員教授であったとしても、教授という名前は絶大なるブランド力を持つことから、特にファンド経営者にとっては羨望の的だ。無数にある投資ファンドから選ぶとしたら、トップスクールの教授が運用しているファンドが選択肢に上がってくることは当然のことだろう。本職のマーケティング戦略としての客員教授という称号を得るために授業を受け持っている人間は非常に多い印象を受けた。彼らの授業の特徴は以下の通りだ。

 

・授業の資料がアップデートされていない(10年前に作ったものをそのまま使用)

・授業の内容も古いまま(20-30年前の事例を延々と使っている)

・授業構成がディスオーガナイズされている(課題が不明確、内容が飛び飛び)

・全てが適当(授業が学生任せ、課題にフィードバックしない等)

 

当然、全員が全員こういった授業をするわけではない。中には良い客員教授も存在する。ただ、個人的に満足度が非常に低かった授業の全てがこうした片手間教授によるものだった。

現代ビジネスのMBA批判記事

友人からMBA批判に関して、現代ビジネスの記事を教えてもらったので、再び反論してみたい。個人ブログの内容であればいちいち反論はしないが、営利目的のサイトの文章であればがんがん反論していきます。

 

gendai.ismedia.jp

 

記事を書くときって、タイトル決め打ちなんですかね?エリート論振りかざすと思ったら、本文と95%くらい関係無い。本文の内容も論点が不明瞭だし、この記事で何を伝えたいのでしょうかね。本質はコンサル叩きでしょうか。それともMBA叩きでしょうか。

それでは本文に参りましょうか。 

「戦略コンサルタント」という、かつて人気であった職業・産業が、今は斜陽産業になっている。

デジタル方面にも積極的に進出するなど、むしろ伸びている業界だけど。

 

コーネル大学ジョンソン経営大学院(MBA)は、米国トップスクールMBAの一つである

コーネルMBAがトップスクールであるとの認識は正直ありません。MBA自体そこまで有名でも無いし、コーネルをトップスクールと評する人(日本人・外人問わず)に会ったことが無い。

 

>(コンサルとしての)スキルセットの希少価値が相対的に低下してきている

希少価値のる具体的なスキルセットを教えてほしい。そもそも戦略コンサルで得られるスキルセットはロジカルシンキングや分析力などの普遍的なものでしかない。環境としてそうしたスキルセットを醸成しやすいってだけで、戦略コンサルで得られる特殊なスキルって無いよ。

 

>従来の戦略コンサルティングファームの業務領域が縮小していることに伴い、コンサルティングファーム各社は今、デジタル・テクノロジー分野に舵を切るようになっている。

戦略案件が減ったからデジタルに移行してきているのではなく、戦略立案を担う中でデジタル戦略を切り離すことが出来なくなったためデジタル分野にも舵を切っているのが正解。というかそもそも舵を切っているということは、ファーム自体の事業領域は拡大していると思うのだが…。

 

コンサルティングファームのみが担っていた戦略部分の領域にも踏み込み、デジタルマーケティング分野から企業の戦略立案まで、ワンストップでサービスを提供する広告代理店も増えてきている。

そうそう、ワンストップサービスの需要が高まってるからコンサルはデジタルに積極的なの。わかってんじゃん。

 

スタートアップキャリアをめざすMBA生の間では、ベンチャーキャピタルも人気のある職業の一つである。

スタートアップを立ち上げたい人がVCに行くの?仕事全然違うけど?VCって上がりの職業であって、スタートアップを成功させた人間が本来目指す仕事なんですよ。スタートアップ立ち上げたいからVC行くってのは本末転倒。

 

戦略コンサルタントという職業の衰退について、現役MBA生という視点から述べてきたが

え?そんな話してたっけ?(デジタル方面に舵を切る+戦略コンサルを目指す人が少なくなった)=コンサルの衰退!って暴論過ぎないですかね?しかも、どちらも間違っている。

 

米国トップスクールMBAは今、筆者のように生まれ育ちがエリートではない人も、誰もが気軽にめざせる場所になっている。

ロンドン・香港で海外勤務を経験

MBAに進学する以前、すでに起業していた。海外スタートアップ向けに日本市場向けのマーケティング支援を行っていた。

ここが一番面白いな。平凡な日本人からすると十分「エリート」な経歴でしょう。MBAは「生まれ育ちがエリート」な人間しか行けない、という前提は過去現在において存在しない。なんかタイトルありきな記事なきがするなー。あと、何度も言いますけどコーネル(テック)MBAはトップスクールでは全くないです。

 

コンサルティングファームと広告代理店の両者に共通して言えることは、旬の過ぎた業界とみなされてしまうケースが多いのか、近年は各社が若手優秀層の採用に苦戦しているということである。

戦略コンサルタントの不人気

事実誤認も甚だしい。本物のトップスクールの卒業生の進路を以下に貼りますけど、ファイナンススクールだろうがなんだろうが、コンサルファームへの就職が依然としてトップ(か2位)です。欧州(INSEAD、LBS)でも同じです。コーネル(テック)の様なトップスクール外の実績は知りませんが。

 

Detailed Charts - Recruiting - Harvard Business School

https://statistics.mbacareers.wharton.upenn.edu/wp-content/uploads/2018/10/Wharton-2018-Career-Report-v4.pdf

http://mitsloan.mit.edu/sites/default/files/2018-11/2018-2019%20MBA%20Employment%20Report.pdf

https://www8.gsb.columbia.edu/recruiters/sites/recruiters/files/CMC_2018-Employment-Report_FINAL.pdf

 

もし、過去との比較で「コンサル行く人少なくなった!だから斜陽!!!」と言いたいのであっても、これも間違っていそう。以下が過去10年間での就職実績(MIT)なんだけど、コンサルの%って変わってないんだよねぇ。毎年少しの変動はあるけど、30%程度で安定している。特に人気も落ちてない。

https://mitsloan.mit.edu/sites/default/files/2018-11/10_year_MBA_FT_summary_2017.pdf

 

うーん、今回はMBA叩きというよりも、戦略コンサル叩きでしたね。いずれにせよ、ネットにはこういった、「何か」の皮を被った批判文章も数多く存在するので、騙されないようにしましょう。

MBAにまつわる勘違い

よくあるMBAにまつわる勘違いについて論じる。以下が、主だったものだろうか?(1)MBAで人生が変わる、(2)英語ぺらぺらになれる、(3)グローバルでの人脈形成

 

(1)MBAで人生が変わる

これはいうまでも無いが、MBA出たからといってスーパーマンにはなれない。よく、キャンパスビジットをする人間と話していて聞くのだが、授業を聞いているだけじゃその道のスペシャリストにはなれない。たとえば、投資に関する領域であることなのだが、授業で株式投資や債券投資を学んだからといって、そのまま投資ファンドで活躍できることはまず無い。投資の世界は、様々な市場変化を目の当たりにし、変化への対応を考え抜き、そしてリスクをとってこそ学びがあるものなので、「授業を受けました!」レベルでは到底プロにはなれない。それは投資の基礎となるフレームワークを学んだに過ぎない。MBAはマネジメントに関する多様な領域に関する基礎を学ぶ場としては適しているものの、応用を学ぶ場としてはそもそもの設計上、適していない。

 

(2)英語ぺらぺら

これは大嘘だ。英語環境への耐性や英語をしゃべる度胸はつくだろうが、2年間すごしたからといってぺらぺらになるには程遠い。これまで海外経験が無く、MBAで2年米国で過ごしたからといって、英語がフルエントにしゃべれるようになった人間を自分は知らない。英語が下手にもかからわず、MBAにきてしまうと大変苦労する。その苦労とは、授業で発言できない、人付き合いが出来ない、授業の内容が聞き取れないなどだ。そもそもMBAは英語を学ぶ場ではないので、英語力向上を主目的にきてしまうと、そもそもの学びの機会を逸してしまうので、やめておいたほうがよい。

 

(3)人脈

これは人による。米国のビジネスシーンにおいて、何よりも大事になるのがコネだ。就職活動では、どれだけコネがあるかが成否のわかれるところだ。いくら高学歴だとしても、応募する企業の内部にコネクションがなければ、クローズリストには載らない。つまり、書類落ちだ。だから、米国で就職するためにはコネ作りが大事。インサイダーによるリファレンス超大事。起業する場合でも、パートナーやクライアントを得るために、コネを作っとくことは有効だ。

一方、日本に帰る人間はどうだろうか。残念ながら、米国人や日本人以外とのコネクションはあんまり生きない。日本でビジネスをやりたいという意欲のある外国人が、日本人である我々とコネを作ることは大いに意味がある。が、我々にはあんまり無い。コネは基本的に作った場所以外には生きない。日本に帰国して、MBA卒業生ネットワークで人脈形成する方が大事だろう。残念ながら、MBA後は現地に残っているので、完全にイメージでしかないのだが。

MBAを目指すべき人

どういった人間がMBAを目指すべきか、といった点について個人的な意見を述べる。

ただ、やはり基本としては「本人が行きたいと思うのであれば、行くべきだ」というスタンスには変わらない。

 

  • 転職したい人

転職したい人、特に異業界に挑戦したい人にとっては意味がある。新卒での就職活動に失敗し、憧れのあの企業に再挑戦したい!とか営業ばっかやてたけど、投資の世界に入りたい!とかいう思いがある場合は非常にいい機会だ。インターンを通じての採用は、これまでのキャリアを一旦リセットして採用されることが可能なため、変化を求めたい人にとってはうってつけだ。有効な業界としては、戦略コンサル、投資銀行、投資ファンド、外資メーカーだろうか。

注意しなければならないのは、海外本社では「超」活発にMBAを採用している会社であっても、日本だとなぜかMBA採用に消極的な場合が多いことだ。これは「僻み根性」から来るものだと断言できる。特に海外のメーカー等では、MBA卒で就職すると、幹部候補生として高い給料と出世がものすごく早いファストトラックが与えられる。こうした採用は広く浸透しているのだが、日本支社ではあまり存在しない。外資系メーカーの人事担当者に聞いてみたところ、こういった幹部候補生制度を、そうない社員が「不公平」と感じるそうだ。だからやらない。日本特有のルサンチマン文化というか、出る杭を打つというか、なんというか・・・・。日本経済の停滞ってこういうところからも見えるんだなーと思いました。いい加減、リスクを取る人の足を引っ張るのやめてもらえませんかね?

 

  • 海外移住(就職)したい人

やはり海外で働くためには当地での著名な大学を卒業したほうがよいのは当然だ。日本のT大だろうがなんだろうが、日本の学歴は海外ではあまり通用しない(理系博士は別!)。MBAを通じて現地有名大学の学位を取得することは海外就職には有効だ。ビザ用件が厳しくなる中、インターナショナル生の採用を絞る企業も出てきているのは事実であるものの、引き続き優秀層を採用しようとする動きは活発である。しかし、前の投稿でも述べたとおり、日本人の採用はそんなによくないことに留意する必要があるのと、OPTのビザが取得できないリスク留意する必要がある。本気で海外移住をMBAと通してしたいのであれば、STEMとして認識されるために、統計学やコンピューター修士の単位を数多く取得し、Majorを取得するべきだ。STEMであれば36ヶ月までOPTを延長できるし、採用もされやすいだろう。難点はSTEM認定されるMBAプログラムが非常に少ないことだ。

 

仮に、学部や修士でSTEM系の学位を取得している場合、MBAでSTEMと認定されなくとも36ヶ月の滞在許可を得られる可能性もある。

 

>If you are currently participating in OPT based on a master’s degree in business administration but you previously received a bachelor’s degree in mathematics, you may be able to apply for a STEM OPT extension based on your bachelor’s degree as long as it is from an accredited U.S. college or university and the OPT employment opportunity is directly related to your bachelor’s degree in mathematics.

https://www.uscis.gov/working-united-states/students-and-exchange-visitors/students-and-employment/stem-opt#_Eligibility_for_the

 

  • 学歴でマウントとりたい人

MBAに限らず、学歴なんて他人にマウントとるために取得するもんだ、といったら批判されるだろうか。日本に限らず、トップスクールの学位が持つ威力は絶大だ。人間がお互いに見栄を切って生きる生物であり、どんなに小さなグループに入っても、そのグループの他人よりもよく見せようと必死になる。だからこそ、取得が(時間的に)難しく、ほぼ全員が何らかのレコードを持つであろう学歴に関しては、見栄の中でも効果が強い。いい学歴を持っていれば、「頭がいい」、「ちゃんとしている」という(誤った)先入観から人から信頼されやすい。

海外MBAは必要か? その2

MBA不要論について、あまりにも筋の悪い仮説に基づいた記事を発見したので、紹介するとともに反論してみたい。

その記事がこれ。

blogos.com

 

 

では、一言一句反論していきます。嘘です。気になる点だけ。そしてMBAに関するところだけ。

まずタイトル。「MBAで成功した起業家はひとりもいない」。この部分ですでに2つ大きな誤りがある。(1)MBAは起業家養成学校ではない、(2)個人的に成功したと思える起業家は無数に存在する。

 

(1)MBAは起業家養成学校ではない:

起業に特化したスクールもあるけど、誰も「MBA出たら起業家になれる」と卒業生は思っていないし、トップスクールでも卒業後に遅かれ早かれ起業する人は10%もいないのではなかろうか。ビジネススクールで学べる内容は、ホリスティックなManagementに関する様々な内容で、非常にいけてない「経営」という直訳でイメージされるものとは異なる。企業戦略から人事論といったいわゆる経営ど真ん中のクラスもあれば、ポートフォリオ理論や株式投資、プライベートエクイティ投資、不動産投資など、投資のマネジメントに関わる多くのクラスも多い。ファイナンススクールであるウォートンやコロンビア、シカゴではむしろ投資系のクラスの方が多いし、人気だ。以前よりは少なくなったものの、MBAの卒業生の多くがIBやアセマネ、PEなどの金融に行く。さっきも書いたが、起業家を目指す人間は圧倒的マイノリティだ(スタンフォードを除く)

 

(2)MBAで成功した起業家は無数に存在する

成功した、の定義があいまいだが、個人的には成功したと思える起業家は無数に存在すると思っている。

投資ファンド界隈の「起業家」はその多くがMBA卒だ。

ウォーレン・バフェット(コロンビア)

レイ・ダリオ(ハーバード)

ラリー・フィンク(UCLA)

ビル・グロース(UCLA)

等々きりがない。

 

それとも彼の言う「起業家」には「投資ファンド」は含まれないのだろうか?投資ファンドのファウンダーだって立派な起業家であるのだが。投資ファンドはだめだという偏屈な理屈をこねるのであれば、「事業会社」の起業家も挙げてあげよう。

 

フィル・ナイト(ナイキ スタンフォード)

スコット・マクネリ(サンマイクロ スタンフォード)

マイケル・ブルームバーグ(ブルームバーグ ハーバード)

等々。

 

いやほんと彼の言う「成功」の定義を聞いてみたい。これはあれだ、大卒でない起業家を並べて「大学なんて行っても意味ない!」といっているのと同じだ。そういった批判はしないんですね。ビル・ゲイツ、ザッカーバーグ、リチャード・ブランソンは大卒じゃあないんですが。

 

タイトルに時間を使いすぎるのもあれなんで、本文を読み進めてみると、

>(MBAは)なぜ無意味かといえば、世界的に見ても、成功した起業家で、MBAホルダーはほとんどいないからだ。

一人もいないのかほとんどいないのかどっちやねん!ちょっと自信がなくなったのかトーンダウンしている。ただ、やはり「ほとんどいない」というのも大きな誤りなのだが。そして、MBA=起業家養成プログラムではない。MBA出の起業家は少ないからMBAは無意味だ、ってまず仮説の立て方がおかしすぎる。

 

ここまで1000字以上使いましたが、まだまだ行かせてもらいます。次、本文。

まず挙げている起業家の人たち。全部ゴリゴリのテック系企業じゃないですか。そういうバリバリの理系企業を挙げて、文系であるMBAの素養を疑うのはちょっと変じゃないですか?というか、今のマイクロソフト本社の社長はシカゴMBA卒ですけど、起業家じゃないから入りませんか。そうですか・・・。

 

>かつて私は国内のビジネススクールで教鞭をとっていたが、講義の後に、希望する学生と連れ立って飲みに行くと、「MBAなんて、役に立たない」と伝えていた。

この方のMBAでの立場を知りませんが、教える立場の人間が、MBAを取得してきている学生に対して「意味が無い」という時点で、この筆者の人間性を疑います。彼らは彼の講義に金を払い、忙しい時間を割いて勉強しにきているのです。そんな意欲のある人間に対して、「あんたらが追い求めているMBAなぞ意味が無い」とはひどすぎる。このエピソードだけで、彼のエゴイズムがありありとわかる。

 

ちょっとおもしろすぎるので、色々言いましたが、MBA批判ってこういうことなんですよ。意味の分からない滅茶苦茶なロジックでMBA不要論をぶちまけ、悦に浸ってるだけ。こういった筋の悪いMBA批判には耳を貸さず、自分が行きたいと思えば行くべきだし、そうでないなら行くべきでない。

MBAと差別

米国のMBAを目指す方々からよく質問される内容が差別についてだ。特に、トランプ政権誕生以降、移民抑制やネオナチの台頭などの報道が目立ち、留学生にとって不安の種となっているらしい。しかし、よほどハードコアな共和党支持(というかトランプ支持)地域の大学に通うわけでないのであれば、不安になる必要はない。どの主要大学も外国人留学生は大きな収益源となっていることから、大学としてトランプ政権の動きに(表立っては)反対しているし、差別を受けることは無い。学生同士でもそうだ。喧嘩がヒートアップし、人種に基づく罵倒を投げる奴もいるが、普段の生活で差別は全く感じない。

ただ、明確な区別は存在する。プライベートな世界に入れば入るほどこうした区別の色は強くなる。まず、アメリカ人はアメリカ人同士でしか基本つるまない。このアメリカ人には、国籍が米国でなくとも、こどものころから米国で育っており、バリバリのネイティブスピーカーも含む。そして、そのアメリカ人同士のコミュニティもセグメント分けされており、アジア人はアジア人同士だし、白人は白人同士、黒人は黒人同士、移民一・二世は移民一・二世、移民三世以降は移民三世以降と面白いように細かく分かれている。

それ以外の外国人は外国人同士でハングアウトする。欧州のMBAに行った人間に聞くと、米国ほど区別される意識は無いそうだ。そもそも、学生の国際性も非常に多様だし、EUという存在が多様性を許容している。一方、米国で言う多様性とは、アメリカ人の中での人種・性別の多様性であり、国籍の多様性ではあまりない。こうした多様性をそもそも前提としていないことから、属性による区別を受けやすい。

こうした話を一般化するつもりはない。アメリカ人でも日本人と親密になろうとする人もいるし、日本人でもアジア人(日本人)と明確に距離を置こうとする人もいる。言いたいことは差別は忌むべきことである一方で、誰と仲良くしたいかという区別は個人の自由だ。こうした状況に対して文句を言うつもりはない。

MBAの中での日本

日本は外からの目を気にする。日本人のスポーツ選手が活躍すると、現地まで赴いて「わかりやすい」現地人(アジア系じゃなく大抵「白人男性」)にインタビューする。日本発の何かがフォーカスされると、こぞって海外メディアの報道を取り上げ、さも一大ブームかの様に脚色する。日本人の自尊心喪失の表れか、こういった海外から日本をポジティブに捉える「心地よい」情報に人々は飛びつく。しかし、日本人が思うほど、世界は日本を意識していない。GDP世界第三位の規模を誇ろうが、外国人にとって日本はただの無数にある国のうちの一つだ。捕鯨だろうが、レーダー照射だろうが、そもそもこちらでは全くもって注目されていない。

 

MBAの文脈に話を移すと、プログラム中に取り上げられた「日本」は二つだけだった。それも、金融・経済政策の失敗、そして超高齢化・人口減少という悪い事例としてである。日本は、ビジネススクールの中で良い取り上げ方をされることは全くなく、失政・失敗の恒例としてしか取り上げられない。かつては、成功を収めた日本企業が数多くビジネスケースとして取り上げられたが、いまや埃を被り、化石化している。「MBAでの注目=世界からの注目」というつもりはない。しかし、ビジネススクールの現場では、紛れもなく日本に対する良い意味での興味は失われていると言わざるを得ないだろう。注目されることが良いこととは全く思わないものの、こうした日本離れは日本人にとっては少しさみしい。