新MBA論

MBAについて色々。タカ派な内容に終始。

ランキングについて

MBAは他の修士課程と比較してランキングに大きく振り回されている気がする。MBAというブランド学位を買いに来ているという意識の人間が多いからだろうか。正直、ランキングを気にしすぎるのは無駄なことだ。そもそも、ランキングの発表元によってメソドロジーがかなり異なり、それに応じて順位も全然異なる。そしてよくわからないバイアスも掛かっている(FTだと欧州系MBAが高い、Bloombergだと金融に強い学校が高い等)。そもそも、ランキングの根拠も年収増加幅とか男女比、インターナショナル比などよくわからない指標が多く、ランキングの意味合いに疑問がる。上位校だからといって素晴らしい学びの機会を得られるわけは無い。上位校でも現役生から授業の質が悪すぎるといって学事に陳情書が出されるくらいだ。

ブランドを買いに来ているといっても、いわゆるトップスクールのMBA卒であれば世間の評価はそこまで変わらない。世間の評価が気になるのであれば、M7、UCバークレー、デューク、ダートマス等であれば一流校と認識されるし、日本人的にはNY、UCLA、ミシガンロス、Yaleとかでも上位校と世間からは認識される。

人間はどんなグループに入っても、その中で少しでも上位にいたいと思う生物なので、無駄なランキングに一喜一憂する気持ちもわからなくもない。しかし、その優越感は何も価値を生み出さないし、自らの浅ましさを深めるだけである。

MBAは学校によって得られるものが全く違う。それはプログラムだけにとどまらず、校風や、周辺環境等にも大きく依存する。引っ込み思案な人間がHBS入れば爆死は必至だし、寒いのが苦手な人間がダートマスなんかに行ったりしたらつらい2年間を過ごすことになる。

日本の就職活動もそうだが、なんでもランキング化して差別化したがる人間が多いが、そんなんしょーもない。自分が行きたいプログラム、納得できるプログラムに行ければそれで良いのだ。

 

コストの話

正直言って、MBA取得に掛かるコストは異常だ。例えば、HBS Class of 2020が支払った学費は年間で7万2000ドルだ。これが2年間掛かることになるので、授業料だけで約15万ドルだ。その他にも、家賃や食費など、様々コストがかさむ。以下のサイトによる試算だと、単身でも2年間で21万ドル要するという。これに渡航費や帰国費用、受験費用等をひっくるめると、は25万ドルといったところか。

 

https://poetsandquants.com/2017/08/11/what-a-harvard-mba-now-costs/ 

 

次に、機会損失についてだが、2年間は当然フルタイムで雇用されないので、給与所得者であれば、2年間の給与所得減は不可避である。

一方、在学中に手にすることが可能な資金としては、インターンによる報酬がある。2年目の夏のインターンで、複数のインターンをこなすことで、約2万ドルは稼げる。そして、インターンを通じて就職のオファーがもらえればサインオンボーナスで2-3万ドルが支給される。そして帰国引越し費用を補助してもらえるケースも多い。しかし、インターンの報酬が実際に振り込まれるのは数ヶ月のラグがあるのと、サインオンボーナス(帰国費用補助含む)の場合は入社後に払われることも多く、支払わない業界・会社も多いので、皮算用して「15万ドルだけ手元にあればよい」、ということには成らないので注意が必要だ。

最終的な総コストとしては、40万ドルにもなる。実際の出費を考えるのならば、入学時点で20万ドルをキャッシュで用意すれば十分だろう。40万ドルもの大金がリーズナブルと思える人間は多くないだろう。MBA留学には金が掛かるのだ。

日本では賃金上昇率がほとんど上がらない中、米国MBAの学費は年10%程度の勢いで伸び続けている。以前はがんばれば手の届く「買い物」であったものの、もはや立派な戸建てを郊外に買える程の大金をMBAに突っ込めるリスクの取れる人は少なくなっているのではないか。こうした数字を見ると、やはり退職しても学費負担だけですむ社費留学制度を利用したほうが得策だと思うし、MBA以外の方法を考えるのも手だと思う。

プライドの高いMBA生

 日本人に限らずではあるが、MBA生はプライドが高い。

トップスクールに入学する人間は往々にして華々しい経歴をお持ちであり、MBAがなくとも安っぽい言葉で表するならば「エリート」である。

そんな日本の「エリート」が世界の「エリート」に成るべく、経営の士官学校(と呼ばれる何か)に入学すれば、当然であるが選民意識は一層高まる。

その意識が顕著になるのが就職活動である。社会人であれば理解は早いだろうが、20代後半から30代に差し掛かる時期に会社の「格」を意識する人間がはっきり言って小物だ。

マネージャークラスになれば、会社の名前ではなく、自らの地位でポジションを取るべきだ。社名ではなく、当人の経験値や人間性がキャリアを形成する。

しかし、MBA生が陥りがちな罠としては、周囲の目を気にするがあまり、「エリート」と見られ続けたいと意識するがあまり、正直な就職先の選定をしない。

彼らにとっての就職失敗とは「エリートとして見られない」道なのである。だからこそ、MBA後の就職先は定型化され、それから外れるものは「失敗」とみなされるため、無理にでもそう見られない様にする。具体的には、独自路線の強い企業(スタートアップや特徴的な業界)に行ったり、米国のスタートアップから盗用したようなビジネスを立ち上げるなどだ。

非常にもったいないが、実感として周囲を気にしすぎてよくわからないキャリアの選択をしている場合が多い。

海外MBAは必要か?

海外MBAは必要なのか?という問いは、筋の悪い問いだ。

必要かどうかは本人が決めるべきだし、絶対に志向すべき学位などそもそも存在しない。英語で筋の悪い問いをしたときに大抵返ってくる答えが、”It depends” だが、まさにそれだ。

 

仮説が存在しないにもかかわらず、MBAの存在意義だけを問いてもまったく意味が無い。仮説が存在しないのであれば、どんな問いも無意味だし、思考する価値すらない。

問いには必ず前提条件となる仮説を要する。もし、MBAを問いの中心としたいのであれば、以下の通り仮説をまず立てるべきである。

 

企業家・起業家になるためには、MBAは必要なのか?

グローバルに活躍できる人間になるには、MBAは必要なのか?

戦略コンサルタントになるために、MBAは必要なのか?

インベストメントバンカーになるために、MBAは必要なのか?

 

こうした具体的な仮説を立てた上で初めてそもそもの問いに答えることができる。しかし、まだ幾分「筋の悪い問い」と自分では思っている。 

当然のことながら、MBAは免許ではなく学位だ。MBAを修了したからといって、特定の業種の専門人材として登用されることは無い。それは他の学問にも言える。文学の学位が無くとも本は書けるし、工学系の学位が無くともエンジニアになれる、コンピューターサイエンスの学位が無くともプログラマーにもなれることと同じだ。資格要件として修了が要求される弁護士や医者等で無い限り、学位など周囲へのサウンディング効果しか無い。

学位と自らのキャリアとの関連付けは、取得した学位ではなく、本人が志向するものだ。自らのキャリア設計に照らし合わせ、必要であれば取得し、そうでないならば取得しない、それだけのことだ。

 日本では、MBAに限らず「留学」を高尚なものとして批判する向き多い。その批判の表層化が「MBA不要論」だろう。MBAといっても単なる学位のひとつでしかないのだから、そこまで批判の矛先を向けられる必要性は無いはずだが、海外留学という文脈から目の敵にされる。よく理解が出来ないことは、MBA取得者が自己弁護にこうした筋の悪い問いに答えようとしていることだ。書籍にもなっているものもある。

良いか悪いかなどその人による。それ以下でもそれ以上でもない、それだけだ。

 

現地就職

 

MBAを目指す目的で一般的に多いのが、「現地就職」である。米国のMBAに入学する多くの(米国人にとっての)外国人は米国での就職を目論んでいる。発展途上国であろうと先進国であろうと、米国のMBAを修了後はOPTを使って現地に就職し、そのままビザサポートの獲得、そして永住を企図している。一方日本人はというと、同じく現地就職を目指す人が多いものの、大抵の場合失敗している。大抵が「挫折」ないしは「日本人という文脈に頼った就職」だ。

 

まず、挫折についてであるが、MBA生(修了含む)と話していて、こう言っている人間を見たことは無かろうか。「現地就職を考えていたけど、色々考えて日本に帰る事に決めた。なぜなら・・・(略)」こういう人は十中八九、現地就職に挑戦し、挫折している。基本的にプライドが激高なMBA生は自分の挫折を認めないし、公言しない。自分の価値を高めるために、事実と異なっていようが、嘘で塗り固めてブランディングをする。しかし、悲しいかな、事実とは異なり、MBA生は挫折をより多く味わうのだ(この点はまた後日)。

 

さて本論に戻ると、日本人の場合、英語力の低さから現地就職を希望しても職を得られない場合がほとんどだ。例外は「日本人だけど、米国育ち」で語学力にハンデを持たない人だ。就職活動でまずコケルのがコネ作りだ。米国の就職活動はコネ命であり、インターンの採用面接を受けるにもまずはコネを作って、クローズドブックに入れてもらう必要がある。しかし、日本人は英語力の無さに起因する「押しの弱さ」と「印象の悪さ」からコネを作るまでには至らないことが多い。インセメスターで現地インターンをする場合は日本人でも多いものの、そもそもインセメインターンを受け入れている企業は安くないしは無償で労働力を提供してくれる学生を餌食にするスタートアップが多く、そもそも採用する気も無いから、やはり最終的なオファーには至らない。

 

次に、現地就職を決める人間だが、大抵の場合、日本人という文脈に頼っている場合が多い。具体的には「ジャパンデスク」や「日系企業の現地支社」だ。個人的な意見ではあるが、現地就職を目的に日本人という属性に頼ることはお勧めしない。米国においてのキャリアの広がりが全くないからだ。ごく一部のセグメントに対しての担当者であれば、出世の道が限定的になることは自明だろう。

 

MBA修了後に日系企業の米国拠点に就職したは良いものの、出世のスピードは遅く、日本の本社から来た駐在員よりも待遇が悪く、そして主要なポストは駐在員が占めているからガラスの天井がある。ビザをサポートしてもらっている場合はより悲惨だ。社を離れることは米国を離れるを意味することからGCを取得できるまでは転職もできない。日系以外の企業に転職しようにも、そもそも日系企業における経験値に対する評価が著しく低いことから、経験を買われる様なことも無く、日系企業間での転職しかできない。日本に帰国しようとも、日系企業の中には「現地採用社員」を下に見ている会社が多く、転職先を見つけることは難しい。

ジャパンデスクも同様だ。狭いセグメントに対する営業担当者がどう出世できようか。高度成長期の日本人担当であればまだ異なっただろうが、経済停滞が明らかな日本に対してリソースを割こうという企業がどれだけいるだろう。

何度も言うが、MBA後に日本という文脈を頼りに現地就職した人達のキャリアは悲惨だ。「日本人」であることしか武器にならないのであれば、現地就職を検討すべきではない。

社費留学の真実

社費留学は送り出す企業にとって無意味であり、即刻廃止すべきだ。一方、派遣される側としては、こんなに有利な制度は無いので活用すべきだ。

 

世界では稀な制度ではあるものの、日本では社費(公費)制度が存在し、年間で数多くの日本人がこの制度を利用して世界中の大学に留学している。彼らは学費だけでなく、家賃、収入、航空券等の費用が保証されるという恵まれた環境にある。社命により大学院に派遣されているだけであり、学位取得は業務であることからこうした厚遇は当然だろう。

 

問題点としては、社費留学生の殆どは数年以内に転職していることだ。こうした修了後の転職を抑止するために、5年間のクローバック期間を設定している企業が多いものの、要求されるものは学費だけであり、給料や家賃は手元に残る。無論、修了後の職が保証されているため、私費生が胃を痛める修了後の職の確保の心配もない。むしろ、社費生はそうした身分をレバレッジにしている。

 

ここからは社費学生にとって明かされたくない事実ではあるが、私が把握する限り、限りなくすべての社費学生は派遣中に何らかの就職活動をしている。特にコンサルティングファームが社費学生向けの短期インターンを用意しており、「コンサル体験」と称して有望人材の囲い込みをしている。当然、インターンは選考であり、パフォームすれば内定が出る。ボストンキャリアフォーラムでのフルタイム採用も活発だ。コンサルティングファームに限らず、優秀であれば社費だろうと採用する。私費と違ってえり好みができるので、業界トップだけ受けるというのがよくある。コンサルで言うと、McKは受けるけど、それ以外は受けない、とかはよくある。内定が出れば転職するし、出なければ派遣元に帰るだけだ。いわばノーリスクで就職活動ができる。

 

本当に愛社精神に溢れ、派遣元に帰ることを第一に考えている人間も当然存在する、しかし、感覚的には10%もいないだろう。皆「MBA採用」というオポチュニティを目にし、そして多様なキャリアの広がりの可能性を目にし、派遣元に帰ろうという意識は自然と希薄化される。

 

今、あなたが社費留学の可能性があり、検討しているのであれば、挑戦しない手は無い。ただ、例外もある。仮にMBAを通じて大きくキャリアチェンジをしたい(他業種⇒コンサル除く)場合は長期インターンが必須なので、実質的に長期インターンができない社費留学は圧倒的に不利だ。

もし、あなたが企業の人事担当者であるならば即刻社費留学制度を廃止ないしは見直すべきだ。優秀層獲得のために「撒き餌」として考えているならばそれは妄想だ。社費留学があるから入社しようと考える人間など存在しないと断言できる。

本ブログの目的について

米国の所謂トップスクールと呼ばれる大学のMBAプログラムを卒業した人間が、よくある「MBAブログ」では明かさない事実(含む意見)についてつらつら書きます。

思い立った背景としては、MBAが美化されすぎている、から。物書きでもないし、アフィリエイト目的でもないです。誤字脱字やロジックがおかしくても気にしません。また、個人的に考えた結論を書いているので、反論を受け入れて考え直そうとも思っていません。

 

以下書こうと思っている内容。

 

・現地就職

・受験

・MBA不要論について

・ビザ

・MBA学生のプライドの高さ

・社費留学

・私費留学

・外からみた日本人